「ちゃんと読んでくれてると良いなー…」

6月5日。プリュイはシエルのお墓にいた。そこには濡れて乾いた手紙があった。

あれから3年間、プリュイはこうして毎日手紙を書いていた。


「ベッドの所においたらいいか、

こっちに置いたら良いか分からなかったからこっちにしたけど…どうなんだろう」


「ちゃんと読んでくれているんだと…思うよ?

読んだのは雨で流しているのかもしれないしね」


プリュイの隣にいた男が呟く。彼女の旦那だった。


「あなたも変わってるね…私もだけど」

「でもそう僕は信じたいよ」


プリュイが小さく笑っていた。そういう彼の目は真剣だった。


「あははっ、実は私もそう思ってたんだ。

一昨日の雨は全部読んだ報告とお祝いじゃないかって」


そう言いながらまた新しい手紙を置いた。

たった3行の手紙であった。2人は目を閉じて黙祷をした。

すると、突然雨が降り出した。空は灰色。太陽は出ていない。


「流石だなぁ…シエルは」

「義兄さんは読むの早いんだね」

「3行だけだったもん、そりゃ早いよ…また長い手紙書かなきゃね」