“向こうの世界へ行きたがっているのに、結局は怖くて行けないでいる”

“翼があれば何処へでも行けるなんて勘違いしている”

“本当になんでこうも自分勝手でいられるのか”と。

聞いていた少年は一言、こう言った。

「本当に臆病だよね…」

少女は頷く。俯いたまま、少女は再び言葉を発した。


「私もこうなってまた臆病だって思った。バカみたいな話だよね」


少年がどう言う事だと少女に聞く。

少女は言っても私の気持ちなんか分からないと拒んだ。

確かに人の気持ちなんて本人にしか分からない。

安易に“分かる”と言ったって、時にはそれが火に油を注ぐような結果になる。


「…でも今は言いたい気分だから言ってあげる」


少女は黙ってしまった少年にこう言うと、自分の話をし始めた。

少女には最愛の恋人がいた。いつかは結婚をしたいとさえ願っていた青年だ。

しかし青年はある日突然、少女の目の前からいなくなった。

青年はいつものように眠り、そのままこの世を去った。

前日まで元気だった青年が突然、だ。