…なんか、悪りいな、ケイド。

先に着いちまった。


「ソーマ!」

「ラファ!」


そこにいきなり現れたラファが、今まで見たことがない笑顔で男をソーマと呼び抱き合った。


「元気そうだな!」

「うん、ソーマも!」


わいわいと再会を喜び合ったのも一瞬で、すぐにラファはティエナが抱きしめて離さないオルドの元に向かった。


「酷い傷…でも、血は止まってる」


近づいてきたラファを警戒したのか、彼女はオルドの頭に触ろうとするその手をパシンと振り払った。

ラファの動きが一瞬止まったが、すぐに立ち上がりメイガスがある方角を見つめた。


「…父さんが来てるんだね」

「今は王になったよ。姉さんは…もういないんだな」

「うん。母さんは死んだよ。それで僕が受け継いだ」

「早くおまえの契約を切りたい。義兄さんにおまえが顔を見せてやれば退散してくれるかもしれない。義兄さんはずっと姉さんとおまえに会いたがってたんだ。ずっとな…」

「契約を切ると…僕は…」

「ラファ?」


ラファが急に俯いたためその肩にソーマが手を置いて顔を覗いた。

どうやら何か訳アリのようだ。


「契、約を、切れば…」


苦しそうな掠れ声が聞こえ振り向けばオルドが目を覚ましたところだった。

ティエナに支えられながら地面に座り込む。


「ラファは、消える…」

「なんだって!そんなこと聞いてないよ!」

「僕はここに長く居過ぎたんだよ、ソーマ」


焦ったようにオルドに詰め寄るソーマの肩を掴んでラファが言った。

どこか諦めたような、達観したような口調だった。


「僕の命は契約によって生かされてるようなもの。契約がなかったらエネルギー不足でとっくに死んでる」

「それなら契約を切った後にすぐに妖精界に帰ればいい」

「それもできないよ。僕の体はもうボロボロなんだ。こんな体が向こうのエネルギーに耐えられるとは思えない」

「そんなのやってみないとわからないじゃないか…!」


ソーマの悲痛な叫びが静かに響き渡る。

だが、いつまでもここでこうしているわけにはいかない。

早急にメイガスをどうにかしなければ。


「お取込み中失礼するが、早くおまえらの家族、どうにかしてくれよ。メイガスの惨状を見ただろ。まさか敵じゃねえけど味方でもねえって言うつもりじゃねえよな?ラファを連れ帰るためだけに行動してるんだったら邪魔だから退いててくれよ」

「……」


俺の言葉に無言で圧をかけてくる目の前の男を睨み返した。

あー、だりいなこういうの。

めんどくせえ。