「なんかもう…パーティーは当分やりたくない」


紅茶で一息ついていると、ケイディスが愚痴りそれに全員が頷いた。


「顔が痛え…」

「気持ちの悪い愛想笑いだったわね」

「どこがだ。完璧だっただろ」


会話もそこで途切れ、ティエナがフォークでケーキを切るカタンという音が妙に響き気まずかった。

それに、ずっと右側を見られないでいる。

1人用のソファーにオルドが座っているからだ。

正面にはリリアナが座り、その隣にはギーヴが座っていた。

隣にケイディスが座っているから隠れられるものの、テーブルの物に手をつけようとすると前かがみになりどうしてもオルドが視界の隅っこにちらちらと見えてしまう。


そんな気まずさが周囲にわからないほど、疲労がこの部屋に重苦しく充満していた。


「ところで、プレゼントはどれぐらいもらったわけ?」

「ああ…わかんない。いちいち数えてないよ。中身は確認してもらって、手紙は燃やすし怪しいものは捨てて凡庸性の高い物は市場に流してる」

「あげるんですか?」

「うん。使えるのに城にあったってお蔵入りになるだけだし」

「なるほど」


手紙を燃やしてしまうのはかわいそうだと思ったけど、立場上普通は受け取ってはいけない人だから仕方ないんだと思う。


「それでは私のプレゼントも売られてしまいますね…」

「え!あるの?」

「え、あ、は、い…」


いきなり肩を揺さぶられて頭がぐわんぐわんとした。


「ケイドお兄様やめてちょうだい、気持ち悪くなったらどうするの」

「あ、ごめん」


パッと肩から手が離された。

今は力の加減ができなくても仕方ない、と笑顔を作った。


「少々お待ちください。取って参ります」

「あたしも行くわ」

「あ、はい」


執務室を後にし2人でそれぞれの部屋に戻りまた合流した。


「あたしも取りに来たのよ」

「そうでしたか」

「中身は内緒よ。すぐわかるけど」

「はい。内緒です」


ふふふ、と笑い合った。

そして執務室に戻ると、3人が一斉に起きたのがわかった。


「…寝てたわね」

「うとうとしてた、らけらよ…」


欠伸を噛み殺しながらケイディスが答えたため説得力がなかった。


「プレゼントいらない人?」

「いいえっ」


そんな彼にリリアナが呆れたように聞くと、ビクッとソファーの上ではねたためクスクスと思わず笑ってしまった。

そんなティエナを見てケイディスが恥ずかしそうに顔に手を当てた。


「あたしからはこれ」

「開けていい?」

「ええ」


受け取って包み紙を丁寧に開け、中の四角い箱の蓋を開いた彼は目を輝かせた。


「やった、ここの紅茶飲んでみたかったんだ!」


箱から取り出したのは四角い缶で、有名なところで生産された紅茶らしく食い入るように側面にある説明文を読んでいる。


「前飲んでみたいって言ってたでしょ」

「覚えててくれたんだね、嬉しいなあ」


目尻を下げてニコニコとする彼を微笑ましく思いつつ、兄妹で口喧嘩していたあの頃と比べて落ち着いた関係になったんだな、と感じた。

最近はギーヴが標的にされているような気がするが。


そして自分の番になり、おずおずと差し出した。


「お誕生日おめでとうございます。これは私からです。ちょっと重いので気を付けてください」

「ありがとう!…あ、ホントだ」


手渡したときに僅かに彼の両手の位置が下がり、大事に受け取ってくれたことがわかった。


「今度は何かな?」


鼻歌でも歌いそうな勢いで上機嫌に化粧箱を開けたため、ケイディスの反応を見たいような見たくないような、と思い若干視線を下に落とした。

やっぱり恥ずかしいなあこういうの…


「あ!」

「え?」

「ちょっと待って」

「ん?」


ケイディスが驚きリリアナが反応して最後にギーヴが首を傾げると、彼は慎重に箱からそれを取り出した。


「マジで、待って、かっこいい…!」


ティエナがプレゼントしたものは。

黒いティーセットだった。