そう。

あのときのオルドの顔とティエナの顔が一致し、デジャブとなって俺に襲い掛かってきたのだ。


「…悪い」


覆いかぶさった状態になっている無抵抗な彼女を見下ろしながら謝った。


「大丈夫ですか…?」


そのまますぐに離れてその場から去ろうとすると後ろから声をかけられた。

だがもう振り返らない。

また感情が爆発してしまいそうだから。


「ああ…」


他にも言いたいことはあったはずなのにその言葉しか出て来なくて我ながらかっこ悪かった。

ザクザクと積もった雪を踏みながら中庭から出て廊下を歩く。

息はここでも白い。


「生きてんだよな…」


今。

ここに。

こうして。


間違えて酒を飲ませてしまい眠りこけた彼女を抱き上げたときはその小ささに驚いた。

軽いとか、重いとか。

そういう次元の話ではなく、俺の中では大きくなっていた存在なのに、いざこの腕で抱き上げ、胸に抱いたときに感じたあの小ささ。

儚さ。


はあ、とわざと空気に息を吐いた。

このすぐに消えていく白い呼気のような儚さを感じる彼女に、俺ができることはなんだろう。


「…やっぱ、そうだよな」


あのペンをあげたって敵いっこねえのにな。


1人で全部抱え込もうとするその悪い癖をいい加減治せよ、なあ?


オルド…