「取り合えずこのまま外に出るぞ」

「お兄ちゃん!ここ!僕ここ!」

「ケイド!?」


突っ切ろうとした矢先、後ろからケイドの声がした。

見ると小さな手がちらちらと見える。

なぜかケイドは後ろに押し戻されていたのだ。


「ケイド!!」


気づいたときにはオルドはそっちに強引に向かっていて声をかける余裕がなかった。

俺もその後ろについて行くが、人数が減ってきたとは言え肩がいろんな人に当たり足がもつれてなかなか進めない。

イライラが募っていたその時、ブチッという嫌な音が頭上からした。


「…マジかよ!!!」


引火したロープが焼き切れて垂れ下がってきたのだ。

もうこの頃になるとテントの中は炎と煙で充満し、ほとんど人はいなくなっていた。

うずくまるケイドに走り寄ったオルドを見つけ安堵していたのだが、その蛇のようにうねるロープが真っ逆さまに俺に向かって落ちて来る。

頭を抱えてその場にしゃがみこんだ俺は覚悟を決めぎゅっと目を閉じた。


…しかし。


誰かに襟元を掴まれグイっと前に投げ飛ばされた。

目を開けると、引っ張ったのはオルドで、ゆっくりと階段を落ちていく最中に見えたのは…


前のめりに倒れていくオルドのホッとした微笑み。


でも見えたのは一瞬で。

俺とオルドの間に燃えた太いロープがズドンと落下し、床から振動が響いてきた。


「オルド…!!」


こんなの悪い冗談だ!

熱さなんて気にせずロープを飛び越えて向こう側に行くと、階段に倒れ込んでいるオルドを発見した。

幸い直撃は免れたものの、思いっきり階段に体を打ち付けたのかピクリとも動かなかった。

遅れてケイドも俺の隣に座り込み必死に呼びかける。


「お兄ちゃん!お兄ちゃん!」

「オルド!おい!起きろ!」


2人でその体を懸命に揺さぶっていると、やっとサーカス団の人が来てくれて俺ら3人は救助された。

全員煙を吸い込んではいるものの、ケイドは無傷で俺は引っ張られて倒れたときにできた痣ができただけだった。

オルドはテントから出てすぐに目が覚め、俺たちの姿を確認すると盛大なため息をついた。


「死んだかと思った…」

「それはこっちの台詞だ!だいたいおまえは!」


と、ガミガミと説教するとオルドはずっと力なく笑っていた。

こっちの気も知らないで、と思いつつオルドに引っ付き泣きそうになっているケイドに気づき2人でなだめていると物々しい軍服に身を包んだ騎士たちが到着した。