「そうなんだ」
「うん。確かわたし達の一個上だったから二年生かな?」
実は、あたし達の学校は普通科と体育科があり体育科は校舎が少し離れている。
「で、なんであの人見てたの?まさか一目惚れしちゃった??」
ニヤニヤしながら笑う夏希に、「ち、違うよ!ちょっと気になっただけ!」と、反論するも
「ふ〜ん、気になっただけ...ね」と、相変わらずニヤニヤしている。
ふと、彼の方を向くとぱちっと目が合ってしまった。どきっ。やっやば!
慌てて前を向き、お弁当を食べる。
「ん?どしたの?」
「べ、別に!なんでもない!」

あたしは家に帰ってからも、彼のことが忘れられなかった。
目が合った瞬間、心の中がどきどきして
これが一目惚れというやつなのだろうか。
「いやいや、まさかね。第一、もしそうだとしてもあたしと彼は校舎が違うし接点なんて...」いや、ちょっとまって。学校祭があるじゃん!学年、科も関係ないからもしかしたら会えるかも!って、あたしみたいな子話しかけくれるわけないよね。だからって自分からも勇気いるし。
「はぁ〜」
その日から、あたしは〝彼〟の事が頭から離れなくなった。

そして、学校祭当日。
「いや〜、やっぱり先輩達はオーラが違うよね!かっこよかったー!」
「夏希、すごい盛り上がってたもんね」
「そりゃあそーだよ!学校祭だよ?楽しまなきゃ!」
「そうだね!」
っと、夏希と二人で話していると、
「ねーねー、そこのお二人さん。二年一組でお化け屋敷やってるんだけど、良かったら来てよ!」っと、看板を持った体育科の先輩達がやってきた。
あ。その中にはあたしが会いたくて会いたくてたまらない人もいた。
「あ、君この前外で弁当食べてた子だよね?」
っとその先輩が話しかけてきた。
「え!あ、そ、そうです!」
「やっぱり」っと笑う彼は前に見た笑顔と同じだった。
会えた。やっと会えた。
嬉しさを噛み締めていると、「じゃ、待ってるからぜひ来てね」、と行ってしまった。
「よかったね〜この前の先輩と会えて」
「そんなんじゃないよ!」
「でも、行くんでしょ?お化け屋敷」
「ま、まあせっかくだし。行こうかな」
お化け屋敷は得意ではないけど、あの先輩に会うにはそれしか...。
「じゃ、しょうがないからわたしも行ってあげる」
「ほんとに!?ありがとう!」
「どうせ、一人じゃ行けないでしょ?」
「ありがとう、夏希だいすき!」
ふふっと夏希が笑った。が、その笑いの裏にはあんな事があったなんて...。

そろそろ行ってもいい頃だとあたしは夏希と体育科の校舎へと向かった。
「ここじゃない?ほら、お化け屋敷って書いてある」
「ほんとだ、」
すると、「きゃーーー!!!!」っとお化け屋敷の中から悲鳴が聞こえた。
「え、...」
言葉をなくすあたしに、黙り込む夏希。
そこに、あの先輩がやってきた。
「相当怖いけど、大丈夫?ちなみに入れるのは二人までで懐中電灯とかは一切無し」
「う、うそ」
ぱっと、後ろを振り向くと、夏希の姿がなかった。
「え?夏希?」
キョロキョロ周りを見渡してもどこにもいない。
「あの子なら悲鳴が聞こえた直後に走ってったよ」
「えー!?」そんな...。
一人でなんて入れないよ...。困っていると、
「んー、じゃあ俺と入る?」
「えっ!」
「嫌だったら別にいいけど」
「そ、そんなことないです!でも、いいんですか?」
「俺は別にいいけど」
まさかこんな展開になるなんて...。
「それじゃあそこのお二人さんどーぞーってお前かい」
入口で受け付けをしていた女の子が先輩に話しかける。そっか、先輩のクラスだもんね。
「俺、この子と入ってくるから」
「なんだよー、彼女?」
「ちげーよ」
「ま、いーけど〜」
「先どうぞ」っとあたしをエスコートする。
お化け屋敷では、エスコートしてほしくないです。っとあたしは心の中で思った。
仕方ない。入ろう。
意を決して、中に入る。
真っ暗で、どっちに進むのかも分からないあたしに、先輩は優しく背中を押してくれた。
途中で怖くなって進めなくなると、「俺、前行こうか?」っとあたしの前に行ってくれた。
あたしはたまらず、先輩の肩のシャツをぎゅっと握った。
不思議と先輩と入るお化け屋敷は、ちっとも怖くはなかった。
無事にお化け屋敷から出ると、先輩は何処かえ行ってしまった。
すると、入口付近に夏希がいた。
「夏希!もー、どこに行ってたの!!」
「ごめんごめん、わたしお化け屋敷苦手なんだ」
「え?でも、一緒に行ってくれるって」
「あーれーは、わたしが行くって言わないと律花、行かないと思ったから」
「なにそれー!」
「ま、結局あの先輩と二人で入れたんでしょ?良かったじゃん」
「それは、そーだけど」
「名前とか聞いたんでしょ?」
「あ、聞いてない...」
「はあ?あんたなにやってんのよ!!」
「だって、タイミングがなかったし」
「馬鹿ねー、連絡先くらい交換しなさいよ」
「そんなこと言われたって...」

結局、それ以降は先輩と会えず、スマホをいじっていると、『学校祭まじ最高』と写真と共に投稿されているツイートを見つけた。
「これって...先輩?」
その写真にはあの先輩が写っていた。
この人に聞いたら、先輩の名前わかるかな...
『いきなりすいません。その写真に写っている人の名前、なんていうんですか?』
いきなりすぎたかな...。でもこれしかない。
最後の希望だから、どうかお願い。
ピコーン。っと通知がきた。
『それ俺、やまとだよ!』
「え、うそ。本人!?」
驚きのあまり、言葉がでない。
「やまと...」
先輩にぴったりの名前だと思った。
『あの、お化け屋敷一緒に入ってくれた先輩ですよね。あの時は、お礼を言えずすみませんでした』
あの時、一緒に入ってくれたのにお礼を言うのをすっかり忘れていた。
『そんなこと気にしなくていいのに。無理に誘ってごめんな』
そんな、無理だなんて。
『全然大丈夫です!あの、今度あったら写真撮りませんか?』
って大胆すぎた?初めてだし、どうしていいかわかんないよ。
『いいよ!てか、連絡先交換しね?』
「え、うそ...やったー!!」
あたしは思わず声にだしてしまった。
『はい!』