あれだ。

あれが、また、きたのだ。

「おかあさん!」

少女は、無意識にそう叫んでいた。

あの日、あれがきたとき、最初に叫んだ言葉だった。

はるか向こうの草原に、大きな船が墜ちたのだ。

はじめは、恋人の船が墜落したのかと思った。

しかし、そうではなかった。

あれは、何だったのか、今となっては知る由もない。

調べるすべも、なにもかも、我々は無くしてしまった。

「おかあさん! どうしたの? なにがあったの?」

少女は、ソファの横で身を伏せながら、母にそう訊いた。