翌日、私は朝から海に出ていた。

昨日の今日で、スッキリした顔のヒロヤと修成がいた。

私に軽く挨拶して二人は練習を始めている。

私はウォーミングアップがてら小さめの波に乗ってみる。

ウォーミングアップを終えて、一旦あがると、ヒロヤと修成がナンパしているのが見えた。

だいぶ、男の子は困ってるみたい。

私は声をかけた。

「二人とも何してるの?」って。

私を見た修成が「センパーイ、ほら、彼が昨日話した…」と私の耳元で囁いた。

「…田辺圭斗くん?」と私が言うと、不思議そうに私を見る男の子。

その時、私の体には電流が走ったような、感覚にとらわれた。

「じゃーねー!俺らもう行くから」そう言ってヒロヤと修成は去っていった。

こんな形で彼に会うことになるとは、予想もしていなかった。

「…あなたのお父さんて…田辺敦之さん?」と私は聞いてしまっていた。

頷く男の子。

「私は、獅童飛鳥よ」と言って手を差し出した。

「田辺圭斗です」と男の子、圭斗君は言った。

この出会いこそが私たち運命の始まりだった。

圭斗君は私の差し出した手を握り返してくれた。

その辺りで、「圭斗~」と呼ぶ声が聞こえ、私が振り返る。

近づいてきていた社長がいた。

「社長!」思わず私は声をあげ、慌てて圭斗君の手を離した。

「…父さん…?」と圭斗君は呼ぶ。

やっぱり社長が圭斗君のお父さんなんだ…

「こんな形で会うとはな。ちゃんと場を設けて会わせるつもりだったのに」と社長が言う。

「なら、今からでも一緒に過ごせる時間作ってもらえませんか?ぜひ、お話したいんです」と私が言うと、

「構わないけど、圭斗、いいか?」と社長が言う。

圭斗君は頷いた。

「良かった~!じゃぁ早速なんだけど、圭斗君!1つお願いが…一緒にサーフィンしてくれない?」と私は厚かましく言ってみたが、笑顔で受けてくれた圭斗君。

私と圭斗君は二人で海に出て、社長を見送った。

「感覚で選んでいいから好きな波に乗ってくれない?」と私が言うと、

圭斗君は中々の波をチョイスした。

私と交差できる波だった。

フォームも確かにとても綺麗で美しい。

確かに、修成が言うだけのことはある。

私たちは二人で波を楽しみ、社長のところに戻った。

「凄いね!二人とも…」興奮気味に社長は言った。

「やっぱりね。圭斗君ありがとう!センスあるわよ。あの二人が言う通りね!」と私が言うと、

「あの二人?」と圭斗君

「あぁ、さっきあなたをナンパしてきた二人よ。彼ら、私の知り合いでね。彼らもまた、日本代表のプロサーファー。そして私が尊敬する生きる伝説こと、ペア大会絶対王者よ」と私は言った。

「だからなんですね?不思議なナンパの仕方だなぁと正直感じてたんですよね」と圭斗君は言った。

「詳しくお話したいので場所、変えませんか?」と私は言って社長と圭斗君の両方の顔を見た。

頷いてくれた二人は私についてきてくれたので、私と圭斗君はそれぞれに着替えに行き、戻ってきて海の近くにあるとある場所へと連れてきた。

ここは、私が小さい頃からお世話になってる、オーダーサーフボードの専門店で、カフェも併設していた。

「あらー飛鳥ちゃん?いらっしゃい。カフェスペース使うのかしら?」と声をかけてくれるのはここの奥さん。

「アイスコーヒーお願いします」と言って席に座る。

「お連れ様は?」と笑顔を向けてくれる奥さん。

「俺、カプチーノお願いできますか?」と社長は言って私の向かい席に座った。

その横に座った、圭斗君は「アップルか、オレンジジュースお願いします」と注文した。

「カプチーノはホットで良いのかしら?」と奥さん。

「…はい。ホットでお願いします」と社長は言った。