千尋なんていらない、と虹に言われたとき、
ぜんぶ終わったと思った。



虹がそういうのなら俺の役目はぜんぶおわりで、そばにいる理由もなにもかもなくなったんだって。

そのことを理解するのには少し時間がかかったけれど、虹がそれを望むのなら、もうそれでいい、って必死に思おうとした。






だけど、無理だった。




ステージの上で震えながら、誰かに告白しようとしていた虹を見て、もう守りたいなんてそんな取り繕ったものはぜんぶはがれて、誰にも渡したくないと思った。





それで気がついたら、手を引っ張って、誰もいないところまできていた。







この子が幸せになれるのならなんだっていい。






ううん。虹、ごめん。違う。





やっぱり、俺は、最初から、
心のどこかではずっと、俺が虹のことを幸せにしたいって思っていたんだ。