虹を幸せにできるのは、千歳くんだけで。
俺は、無理なんだって。

なんでもできて、器用な千歳くんに俺は叶うわけなんかなかったから。
それだったら、もういいやって思った。




なのに、千歳くんはあっさりと虹を振った。

そのことが許せなくて、許せなくて、それで虹が俺の前で泣いたとき、そっと心に誓ったんだ。






―――俺が、虹のことを守る。


中学三年生のちっぽけな俺の、大きな決意だった。






恋は叶わなくていい。


虹が、泣かないなら、幸せになれるなら、それでいい。

笑ってくれるなら、少しでも千歳くんの傷が癒やせるなら、俺がずっとそばにいたい。

千歳くんが戻ってくるまで、ずっと、そばにいたい。






虹の弱いところを、虹を傷つけるものを、ぜんぶ知ったら、完璧に虹のことを守れると思った。

ぜんぶ、知りたいっておもった。

そのために、いちばんそばにいるんだって、虹の隣にいる理由をいつも正当化させようとしていた。