「――虹、ずっと好きだった」 それから、また引き寄せられて、今度はしっかりと瞳をあわせて、虹、と大切に名前を呼ばれた。 小さく頷く。 そうしたら、ゆっくりと唇がおりてきて、ちょっとぎこちなく、だけど果てしなく優しく、重なった。 こうやって、触れてみたかった。 こうやって、千尋と同じ気持ちになりたかった。 そう思いながら、目を閉じたら、『虹ちゃん』ってちょっと難しい顔をしたあの頃の千尋が、嬉しそうに微笑んだ気がしたんだ。