「たぶん、俺さ、虹に対して、好きとかそういうのはとっくのとうにこえてると思うよ」

「.......うん」

「.............」



その声からぜんぶ、伝わってくる。


だけど、千尋、




「ーーそれだったら、戻ってきて」



わたしは、優しさ以外もほしいんだよ。





うん、って千尋が頷いた振動が肩を柔く震わせた。



幸せにしなくていい。一緒に、恋がしたい。ああ、そうか、千尋の優しさがひとつも赤色に見えなかったのは、愛だったからかもしれないね。


あやうく、私の恋が愛に殺されるところだった。
でも、もしかしたら、愛の中に恋はずっとあって、それを千尋は精一杯隠していたのかもしれない。




千尋が、一度私の身体を離して、床におちていたくちゃくちゃの虹色ハートを拾う。

それから折れ曲がった部分を直して、私の手に握らせた。





「虹、」

「うん?」

「これは、俺があげた」

「うん」

「虹のことが大好きだったあの頃の俺が、虹が泣き止んでほしくてあげたんだよ」

「…うん」

「嘘ついてごめん」