「……ひ、ひどいよ」

「ね、本当」

「……っ、朝比奈君が、そ、そんな人だって思わなかった……」

「そっか、ごめんね」




幸せそうな気配があっさりとひいて、お決まりのパターン。

千尋に血も涙もないわけじゃない。人の気持ちが分かっていないわけじゃない。




ただ、自分が関心のない人に、狡い優しさを使わないだけで。

千尋は人の気持ちが分かるから、どうすれば幻滅させられるかも心得ているんだ。




ふいに訪れた重苦しい沈黙に、私までいやな気持ちになる。


今日こそは、待ち合わせ場所を変えよう、って千尋に言おう。
17回もよくたえたものだ、私。




腕時計をみると、17:15をさしている。


昔、今日と同じように千尋に告白した女の子がしぶって、30分待たされたことがある。

そのときのことを考えると、15分はまだマシな方。