「――千尋なんて、もういらない」







最低な捨て台詞。嘘だらけ。

だけど優しさはもういらない、ってそれは本音。





私は千尋をおいて公園を出て、家までかけだした。

千尋は、追いかけてこなかった。





背中はいつまでもひんやりとしていて、歩きづらいワンピースと、走るたび首元をくすぐるポニーテールの毛先に、ようやく目の奥が熱くなってくる。

だけど、涙はこぼれそうでこぼれなかった。





月はこんな夜なのに嫌味なくらい綺麗に、白く光っていた。




その白さに後悔がみるみるうちに膨らんでいったけれど、もう遅いんだってことも分かっていた。

全部、ぶちまけたから。
取り返しはつかない。


だったらどうすればいいんだって、そこまでは月の光は示してくれなくて。





もう、私は、何にすがればいいのか分からなかった。