大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】






朝早くから出かけたというのに、気がついたらあたりは薄暗さの気配をみせていて。
丸1日、動物園に滞在していたことになる。

高校生にもなってそんなにも長く動物園を楽しめるなんて思ってもいなかった。まだ、幼い部分が残っているのかもしれない。




千尋も私も見たいところがもうなくなって、最後にもう一度カバを見に行ってから、動物園を出た。

ありがとうございましたー、なんて出口の掃除をしていたスタッフの人に笑顔をむけられて、軽く頭をさげる。






そうしたら、するり、と自然な流れで千尋の手が私の手からすりぬけていった。




久しぶりに手のひらに触れた空気はひんやりとしていて、それと一緒に欲張りな寂しさをつれてくる。

動物園のような非日常的な空間をでれば、手をつなぐ、という行為は終わるらしかった。

離れた手に、ちら、と隣の千尋を見上げたけれど、目は合わない。
夕方の色に照らされた横顔があるだけだった。


もう一度、自分から手を繋ぎ直す勇気も、繋ごうと言う勇気も、私にはんかったけれど、今日は頑張ったからもういいやって妥協する。








電車に乗って、自分たちの最寄り駅まで戻る。

一席分空いてるところに座らせてくれた千尋は、やっぱりどこでも優しかった。





「虹、今日楽しかった?」

「うん、楽しかったよ」

「なら、よかった」




千尋は楽しかった?と聞こうとして、答えは私と同じだって思えたから聞かないことにした。