「俺も、あんまり好きじゃなかったよ、キリン」
「え、」
「だから、今日はキリンのところはいかない」
苦手、と声に出していったわけではないのに、やっぱり案の定、千尋は最初から分かっていたみたいで、俺“も”、なんて言い方をしてきて。
それからしばらく黙ってカバを見ていたら、「なんか、懐かしい」と独り言みたいに呟く声が隣から聞こえてきた。
その後は、キリンがいる場所だけを避けて、色々と見て回った。
あの頃知らなかった千尋のことをたくさん知れて、一度も離れなかった手が嬉しくして、私は、幸せだった。
カンガルーが可愛くて好き。
ゾウはいつか乗りたいかも。
ツキノワグマは、昔見たアニメ映画でヒーローだったからかっこいいって思ってる。
今日初めて知ったこと。
別に何かに使えるような情報じゃないけれど、それだからこそ、ほしかったもの。
ずっとそばにいても知らないことはまだたくさんあったんだ。
それから、実はフラミンゴは苦手なんだと、もう一度鳥のコーナーに戻ったとき千尋は言っていた。折れそうな足が怖いらしい。
知らなかった、と言ったら、昔言ったけど虹は何も聞いてなかっただけだよ、とつかめない笑みを浮かべていた。なんて答えればいいのか分からずに、握る手のひらに力をいれて、それを返事の代わりにした。



