大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】







おずおずと千尋の手のひらに、自分のを重ねれば、ぎゅっと弱い力で握りしめられる。

千尋の手にこんな風に触れるのははじめてで、こそばゆくて、胸がきゅう、と縮むような心地に、うまく千尋の顔を見れないでいたら、「ほら、いくよ」と千尋は私の手を引いて、歩き出した。




指と指がからむようなつなぎ方ではなく、ぎゅっと包むようなつなぎ方。
千歳くんとは違うつなぎ方。

千尋の手のひらが自分の手のひらと比べて、こんなに大きいなんて知らなかった。




好き、が少しでもこの手をとおして伝わっていればいい。

恥ずかしくて、まだ頬の熱は冷めないけれど、そのままで千尋こっそり見上げる。

千尋は、カバがいる場所を探しているのか、遠くを見ていて、目は合わなかったけれど、手のひらの熱で私はもう十分だった。












「“カバなんて、虹、あんまり好きじゃないし”」

「……なに?千尋」

「俺、ほんと記憶力いいから覚えてるんだけど。千歳くんに虹が言ってたの」

「そういうのは覚えていなくていいよ」

「あれって女の子アピールだった?」





ぼてっと顔だけ水面にだしたかばを見ながら、意地悪に千尋はそう言って繋いでいた手にからかうみたいにぎゅっと力をいれてきた。


本当に、憎いくらいの記憶力。

私は千尋のほうは見ずに、唇をとがらせて、ぎゅうっと千尋と繋がった手を握りしめた。


確かに、幼少期の私ならやりかねないアピールの仕方だったと思う。

自分でさえ覚えていないことを、あのとき動物園を楽しめていなかったはずの千尋が覚えているのは少し癪だ。