次の日の夜。
中間テストも無事終えて、開放的な気持ちに包まれながらベッドで微睡んでいたら、枕元に置いておいた携帯がピリリ、と突然震えた。
眠りにおちそうになっていた意識は、一気に現実に戻される。
バイブ音は、着信を知らせるものだ。
瞼をこすった後に、名前も確認せずに通話ボタンに指を滑らせる。
耳にくっつけた携帯はひんやりと冷たくて、眠気の波はあっさりと消えていった。
「…もしもし、」
だけど、今の今まで半分眠っていたからか、でた声は少しだけ掠れてしまう。
『もしもし、虹』
「……えっ、千歳くん?」
名前を確認しなかったから。
意識は現実に戻されたとはいえ、寝ぼけている私がまだいたから。
それに夏の終わりに電話をしたという記憶もまだ鮮明に残っていたのも、たぶん要因。
私の声を最後に、ほんのすこし流れた沈黙。
あ、と思って誰からの着信であったか確認しようとした瞬間に、電話越しでまた、低い声がした。



