日が落ちるのが随分とはやくなって、もうあたりは完全に夕暮れだ。
最近あんまりうまく空が染まらない日が続いていたけれど、今日はオレンジから青にかけてのきれいなグラデーションを描いている。
隣を歩く千尋の影は私よりもうんと長いのに、影のかたちがパズルのピースがはまるように私の影に時折くっついてくる。
千尋はパーソナルスペースの感覚がちょっとおかしい。
だけど、そうやってくっつくすれすれで隣を歩く千尋のことを、少しも不快には思っていないのだから、おかしいのはお互い様だ。
「明日、何の教科?」
「国語と世界史だよ」
「虹の得意教科じゃん」
「うん。というか、金曜日ってキリがいい曜日にテストが全部終わるのって達成感、倍増するよね」
「な。あと、解放感」
明日の2教科分のテストを終えて、土日をはさんで、翌週からの学校はすっかり学祭モードに切り替わるだろう。
それで学祭も終われば、あっという間に冬が来る。
そうやって季節がめぐっていく。
願ってもすがっても、結局すべては変わっていく。
でも、高校二年生の私は、そういうことをうまく理解できるくらいに大人でもないし、強かでもない。
他愛もない会話をしていたら、いつの間にか家の前に着いていて。
いつものように、千尋は私の家の前で、じゃあ、と手をかるくあげて、私にくるりと背をむける。それから、向かいに建つ自分の家に帰っていった。



