「また、教えてやるから大丈夫」
「…うん。ありがと」
わしゃわしゃって、変ななでかた。
落ち込んでる私をなだめるふりしてちょっとだけ馬鹿にしているような手つきに、むっとして唇をとがらせたら、はは、って可笑しそうに千尋は顔をくずした。
「そういえば、もうすぐ学祭だけど」
「あー、そっか。もうそんな時期だね、今年も楽しみ。千尋のとこは何するの?」
「縁日。俺、綿菓子の係する」
中間テストが終われば、すぐに学祭のシーズンに入る。
外部からもたくさんの人が来て、結構な賑わいをみせるし、準備期間も割と長くとるから学祭の飾り付けや当日のイベントも手の込んだものが多い。
クラスごとに、お化け屋敷やカフェ、その他いろいろな企画をすることになっているけれど、どうやら千尋のクラスは縁日がテーマらしい。
それで、千尋は綿菓子の係なんだ。
千尋が、綿菓子製造機の前に立ってくるくると割り箸をまわしてその周りにふわふわの綿飴をつけていくところを想像したら、あまりにもシュールでおもわず笑ってしまった。
そうしたら、千尋は、少しむっとした顔をつくって、こつんと肘をあててくる。
だけど、ゆるまる口元は抑えられなくて。
どうせ、千尋のことだから、そこに群がる女の子たちにも甘い笑顔で甘い綿菓子を渡すんだろう。
私も、からかいついでにもらいに行こう、なんて、学祭の楽しみがひとつできる。
「虹のとこは何すんの」
「パンケーキ屋さんする。私は、看板とかエプロン可愛く作ったりする係になったから、当日は何もないけど準備期間がちょっと忙しいかも」
「そっか。たぶん俺、準備期間は暇だし手伝ってやろーか?」
「……いや、大丈夫だよ。他の人もいるし」
「そ。分かった」



