大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】






「……かっこいいところ、かな。体育の時、とか、運動も得意でしょ?あと笑った顔が、好き……」

「へー」

「あのっ、」

「うん、でも、ごめんね。付き合えないかな」

「……お試し、とかでもいいんだけど、」





怪しくなる雲行き。


それも最初から分かっていたことだけど、それなら、どこが好きとかそういうことはわざわざ聞かずに、はなから断ればいいのに。

今までに何度も思ったことを今日も思う。




「んー、君とお試しで付き合うほど暇じゃないかな、俺」

「……え、と」



「今日、君のことはじめて知ったし、いきなり告られても、困る。これから別に仲良くしたいともあんまり思わないから、ごめん。じゃーね、さよなら」




人をなめたような甘い声はそのままで、一息でさよならまで言ってのけた千尋は、今日も今日とて残酷で、くそやろうだった。

私の方に近づいてくる千尋の足音。

もうひとつの足音は、かけだすように離れていく。
千尋に今の今まで告白していた女の子が、どこかに去っていったんだろう。



また、朝比奈千尋はくそやろう、って思う女の子がひとり増えたかもしれない。

本人はそんなことひとつも気にしていないようだけど。




「虹、お待たせ」

「……うん」