「朝比奈くん、あのっ、もう帰るとこ?」

「あー、うん、人を待ってる」

「……あっ、そっか。あの、うん、えっと。この時間くらいに朝比奈君が下駄箱のとこにいるって友達に聞いてそれでっ、」

「うん」





……そろそろそうなるだろうな、なんて確かな予感はしてなかったものの、今下駄箱の影に隠れながら、別に驚きもなく納得している。憂鬱は一気に膨れ上がっているけれど。




これで、たしか、25回目。

キリのいい数字。でも、全然めでたいことじゃない。





秋の放課後は、影が長くのびるみたい。

千尋たちにばれないように息を潜めてこっそり下駄箱の後ろに隠れているものの、長くのびた影が少しはみだしてしまっている。


ばれていたら嫌だなと思いつつ、二人の会話に、不可抗力的に耳をすませてしまう。