「餌付けってなに、」
「俺の言うことちゃんと聞いてほしいから」
「………」
「朝のことは言い方が悪かったから、それは謝ったけど。でも別に、言ったこと撤回するつもりはない」
千尋が一度、ストローでアイスティーをちゅーっと吸い上げた後、無遠慮に私のクレープのクリームを人差し指ですくって口に含んだ。
それから、甘すぎる、と言わんばかりに顔を一瞬ぎゅっとしかめる。
自分がしたトッピングのくせに、なんて顔するんだ。
隣のパラソルにいる女子高生たちがさっきから、ちらちらと私たちの方を見ているのを感じる。
千尋はひとつも気にせず、私をじっと見ているけれど。
その分、私が気になってしまうことは、いつか文句の形で千尋に言わないと気が済まない。
「虹にずっと言えてなかったから、爆発した、たぶん」
「……どういうこと?」
「虹、水嶋の話をすると不機嫌になってたじゃん。なんか、嫌がってた。今はそういうの関係ない、とかそういうこと言って、じゃあいつなら言っていいんだよ、ってタイミングさぐったりしてたけど、結局言えなくて」
「……、」



