「……ご機嫌取り?」
「はあ?違うけど」
千尋はアイスティーをパラソルに備え付けのテーブルの上において、強引に私の手にクレープを握らせる。
それから、私の前にどかっと座った。
アイスティーの氷が、からん、とゆれる。
なんで、今日の千尋は強引で、乱暴なんだろう。
千尋にはそういうのは似合わなくて、きっと苦手な早起きをしたせいだ、と思ったら少し面白くて、頬がゆるんでしまった。
「どっちかっていうと、餌付けだよ」
千尋が机に行儀悪く両肘をついて、クレープの落っこちそうなクリームを口に含む私をじっと見る。
キャラメルソースとクリームの甘さが合わさって口の中に幸せが一気に広がっていくのを感じながらも、餌付け、なんて意味の分からない千尋の言葉に反応しないわけにはいかなくて。



