いつも家に帰るために通る道ではなくて。
この前一度だけ通ったところ。
百瀬さんのことで言い過ぎた後に放課後デートに誘った日に、千尋と歩いた道だ。
校門を出た時点で違っていたのに、どうして気づかなかったんだろう。
たぶん、気まずさとか千尋が無視した派手な女の子たちのこととか、そういうものに気をとらわれすぎていて、ただ千尋の隣をついていくように歩いていただけだったからだ。
ぼんやりしているにも程がある。
「……千尋、どこ行くの?」
駅前にでる方向で、自分たちの家とは逆方向。
いまさら聞くのはすこし遅い気もしたけれど、行き先が分からないまま歩いているのは少し不安だ。
千尋はポケットから手を出して、それから、私に顔を向けた。



