大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】






「虹が怒ってたらどうしようって思った」

「……怒ってたよ、でももういい。…それに千尋も怒ってたじゃん」

「俺は、怒ってるとはちょっと違う」




あれのどこが怒っていなかったって言うんだろう。


首をかしげて千尋を見ていたら、千尋は私の指に目線をおろして、「虹、いつまで袖つかんでんの」と、呆れたように少しだけ表情をくずして、ようやく難しい顔をやめた。




急いで千尋の袖から指を離して、ぎゅっと手のひらに指を丸める。


カーディガンのちくちくした毛糸が手首にあたって、千尋に伝えるのを忘れていたうちにもう新しいカーディガンじゃなくなったじゃん、なんてばかみたいな八つ当たりを心の中だけでする。




それで、ふと前を向いたら、思っていた景色じゃなくて、思わず目を見開いてしまった。