お母さんが玄関のベルを押して、ドアの向こうから『はーい』なんて、高い声がきこえて。


それで、すぐに綺麗な女の人がでてきた。

その人が、千尋たちのお母さん。






「向かいに越してきたものなんですけど、.......」




そっと背伸びをしてクッキーの詰め合わせを千尋のお母さんに渡せば、花が咲いたみたいに綺麗な笑顔をむけられて。


子供ながらに、綺麗なひとだって思ったことは覚えている。





「可愛いお子さんですね。おいくつなの?」

「.......えっとねぇ、虹ね、ろくさい、だよ」

「あら、うちの下の子と同じだ。ちょっと待っててくださいね、うちの子たちも呼んできます」



パタパタとスリッパの音をたてて、千尋のお母さんが玄関から消えたと思ったら、また、すぐに戻ってきて。

今度は一人じゃなくて、ふたりの男の子を後ろにつれてきていた。