「まだ、千歳君のこと、すき?」





掠れた千尋の声が、優しく右耳にはいってゆく。

どうしてその答えを千尋がほしいのか、知らない。





だから、本当のことなんて、言わない。






「ーー好きだよ」

「……そっか」

「千歳君が、好きだよ」




こんなところ他の誰かが見たら、ただいちゃついているようにしか見えないだろうな。



でも、現実はそうじゃない。




私と千尋の間には、いつも”千歳君"という壁がある。





少しの沈黙が私たちを包んで、そのあと、千尋がゆっくりと離れていった。




「この前、電話かかってきた。千歳君から」

「そうなんだ」

「虹、元気?って。ちょー元気って答えといたから」

「うん、ありがと」