「ーー会いたい?」





思わず、千尋の顔を見上げてしまった。


会いたくないといえば嘘になる。
かといって会いたいっていうのも違う気がする。



ただ、彼が今、元気にしているのか確認したいだけで。






「……どうかな、分かんないや」

「虹は、千歳君に会いたいよ」

「そうかな、」

「うん、そういう顔してる」




蛍光灯の光は淡いから十分に見えていないくせに、なんでも分かっているような声でそういった千尋に、頷いておいた。


千尋が、そういうなら、それでいい。






「もう一回聞くけど、」




千尋の陰が私のと重なる。

千尋が、私の右耳に唇をよせる。



どきり、と心臓が鳴ってしまうのは、きっと、そう。


別に千尋じゃなくても同じことだ。