承諾の返事をした私に水嶋くんは、「渋々って言葉がぴったりー。別にいいんだけどね」と嫌みに笑う。

私は、それには何も返さずに、立ち上がった。

さすがに教室では視線が痛すぎて、お父さんが作ってくれたせっかくのお弁当も味わえないだろうから、今日も食べる場所は屋上の前の階段でいいだろう。



水嶋くんに何も声をかけずに、教室の扉に向かったら、ふわあ、と大きな欠伸をひとつ落として、水嶋くんもついてきた。


教室を出たタイミングで、制服の裾を引っ張られて、なに?と尋ねれば、「俺、手ぶらなんだよね」とお昼ご飯に誘ってきたのは彼のくせに訳の分からないことを言われて、思わず眉をしかめてしまう。

ゆるさに苛立つくらいには、私は彼になれてきたんだと思う。




「どうするの?」

「んー、この前のとこで食べるつもりだよなー?」

「うん」

「その前に、購買よってい?」




お昼の購買はかなり混み合ってるから、できれば私のところにくる前に行ってきてほしかったけれど、別に問題はない。


水嶋くんに軽く頷けば、彼はまた、ありがとー、なんて間延びした口だけのありがとうを私によこした。