ずるいやりかた。


千歳くんっていえば、千尋はそばにいてくれるんじゃないかって。
今からでも、百瀬さんのことを断ってくれるんじゃないかって。



最低だ。

千歳くんのことが好きじゃないって分かってほしいくせに、結局肝心なところで、それを利用してる。




でも、だって、それ以外、今、何にすがればいいの。




こんなにこころの中は泣いているのに、瞳も潤まないし、目の奥も熱くならない。
不思議だ。


ぎゅっと唇をかんで、千尋を見上げる。




千尋は、悲しそうに、傷ついたように、顔をゆがませていた。

本当に最低だ、と自分自身に思う。


それでも、再び、千尋の口が、ごめん、と動いたから、目の前が真っ暗になった。



パラソルから、千尋だけ一歩出る。
夕暮れに、輪郭が、ぼやけていく。