「虹、離して、手」

「…なんで行くの?」

「離して、手」





――『朝比奈くんのこと独り占めさせてあげられなくてごめんね?』


今、はじめて、人のことを、こんなに憎いと思っている。


だって、今、私と千尋が一緒にいるんだってたぶん、百瀬さんは分かってる。
それでも、電話を千尋にかけたんだ。





どうにも離せなくてすがりつくみたいにつかんでいた手を強引に千尋はふりはらって、私から距離をとった。

それから、また、ごめん、と言う。
千尋をつかんでいた手は行き場を失って、寂しく手のひらに空気が触れる。



泣きそうで、全然涙なんてでない。

乾いてる、
悲しいくらいに。