「虹?」
どこに?ってそんな答えが分かりきったむなしいこと聞きたくないのに。
「…百瀬さん?」
甘さの欠片もない、ひとつも可愛くない声で尋ねた私に、千尋は気まずそうに頷いた。
さっきのことがあっての今だから、そういう顔をしているだけ。
嫉妬。
嫉妬。
嫉妬しかしてないのに、つかんだ腕から千尋にはたぶん一つも伝わってない。
そういう顔だ。
物事はかさなってゆく。
どうしてこうも、たたみかけるみたいに苦しいことばっかり起きるのだろうか。
はじめて、放課後デートに誘えたのに。
千尋が私の好きなクレープを覚えていてくれたことだけで嬉しくなれていたのに。



