しばらくして、千尋は、携帯を耳から離して、ポケットにしまった。



それから、ゆっくりと私に視線をむけて、その口が、さっき別のことを私に言いかけていた口が、ごめん、とほしくもない三文字を紡ぐ。




そんな言葉いらないよ。やめて、千尋。


分かってしまう。

今から、千尋が言いそうなこと。




そして。





「――ごめん、俺ちょっと今から行かないといけない」




申し訳なさそうに顔をわずかにゆがめて、私が返事もしてないのに立ち上がろうとする千尋。





その腕を、とっさにつかんでしまった。