「どうして?」

「…私は、振られることもできないから。気持ちも信じてもらえない」

「でも、やっぱり朝比奈くんが一番仲いいのは虹だと思うけどなー」

「……だけど、恋愛対象にはいる距離だったら、美優がさっき話してた、購買でふられちゃったって女の子の方が近いよ」





いつかの、下駄箱で。
千尋が振ろうとしている女の子に対してそういうことを言っていたのを思い出す。



そうしたら、きゅうと胸が痛んで、口の中にはさっき飲み干したはずの苺ミルクの気持ちの悪い甘ったるさを感じた。





そんな私に、美優は、「元気出してよ、」と自分の食べかけのカレーパンを私のほうによせる。




「…正直、あんな顔とスタイルだけの最低な男、虹しかあつかえないと思うよ私」




ちょっと意地悪く目を細めて笑う美優らしい慰めかたに、私もちょっとだけ笑い返す。


それから、最低だけど、美優は知らない最低じゃないところも本当はたくさんあるんだよ、なんて恋心も受けとって貰えなかったくせにこころの中だけでそう付け加えて、差し出されたカレーパンを一口かじった。