「和詩、もう帰った?」

玄関から戻ってきた智尋に近寄った。

「うん。出直してこいって言っといた。」

智尋が無理に笑っていることぐらいわかるよ…。

「智尋、学校行かないの?亜依心配してんじゃない?」

「またあの子?柚姫、別れたんじゃないの?」

智尋の返事よりも先に美恵子さんの声がした。

この人は本当のお母さんじゃない。

外では『お母さん』って呼んでるけど、家でそう呼ぶと怒られる。

『誰があんた達のお母さんよ!』

殴られた時もあった。

私達はこの人を美恵子さん…と呼ぶ。

私達の本当のお母さんは死んでしまった。

美恵子さんはお父さんの再婚相手。

私の中学の事。

智尋の喧嘩の事。

美恵子さんに話したら美恵子さんの視線がまるで変わってしまった。

私達を避けるようになった。

和詩に別れろと言ったのも、私達のためじゃない。

自分のため。

和詩は優しいね。

最後まで私を愛してくれた。

「あの子もあの子よ。別れろって言われてすぐに別れるんだもの。……それくらいだったのよ、あんた達の愛は…。」

「そんなことない!和詩は私を好きでいてくれた!大切にしてくれたもん……。」

私は美恵子さんを睨んだ。

美恵子さんは煙草を吸い始める。

「馬鹿じゃないの?何が大切にしてくれた……よ。愛は身体で表すものなの。柚姫はあの子とsexしたことないでしょ?」

………愛は身体なんかで表すものじゃない。

「あの子もそのくらいの気持ちだったのよ。」

リビングに戻る美恵子さんの背中を睨み付けることしかできなかった。