曖昧なポジション




触れるだけのキスかと思いきや、クールな彼のものとは思えないほど情熱的だった。


とりあえず抵抗した。



だって此処、道端だよ?



「なんだよ、嫌なのか」



唇をほんの少し離して言葉を紡ぐ水沢は不機嫌そうだけど、声色は柔らかい。



「誰が見てるか分からないから……」



「そんなこと知らねぇよ」



挑発するような目をして水沢は再度、私を抱き締めた。



「こっちがどんだけ我慢したと思ってるんだ」



「我慢してたの?」



「ただの同僚の関係で、手を出して嫌われたくなかったから。送り狼にならないようにタクシーの順番を配慮して、いつもいつも触れたいという欲望を抑えるのに必死だった」



「……嫌じゃないよ」



かたちは同僚でも、私の目にはずっと水沢は好きな人として映っていたから。



キスも嫌なわけがない。






「嫌じゃないなら、良いな」




「……え、」




反論する間もなく、塞がれた唇。



早い展開に幸せを噛み締める余裕なんて、今はない。






けれど明日も、明後日も。



私は水沢に恋をして、



幸せな日々を送るのだろう。





叶わない恋をしているのなら、



その辛さを引きずるよりも、




自分なりの蹴りのつけ方を考えて、
前に進むことの大切さを実感しました。



だって



幸せは、意外とすぐ近くにあるから――。










【完】18/08/17







最後までお付き合いありがとうございます。
映画館デートが好きな私ですが、次回は違うデート模様を書きたいと思います…
誠にありがとうございました。