今回の個室は以前と違う、よりによってソファーシートの部屋。

今日は向き合って食事も緊張するけど、ソファーシートに腰掛けてみたら、思ったよりも東雲部長との距離が近くて意識してしまう。

緊張で心臓が早く脈打ち、宥めなければとメニュー表を手にした。

いくつかの前菜と、メインのものを頼んで。

ガラス窓の外に広がる格別の夜景を眺めながらグラスを重ねる。

コクリとビールを喉に流し込む東雲部長を盗み見れば、上下する喉仏が夜の雰囲気もあって色っぽい。

僅かに視線を持ち上げた先には、グラスのふちに触れる唇。

この唇と、数時間前に重ね合ったのを意識してしまい、私は視線を慌てて外した。

……東雲部長の気持ちが、わからない。

決定打となる想いを告げられたわけでもなく、見せられたのは独占欲と怒りだ。

というか、よく考えてみれば私ってば部長に呆れられているのではないだろうか。

何せ彼はあまり女性を信用していない人だ。

結婚に期待しない同士だし、なんかこいつならいいかなと同居して、なんだかんだハプニングはありつつもいい関係を保てていたであろう矢先、酔っぱらっての一線越え。

その上、鳳さんはやめておけと忠告してるのに、なに易々と触らせてるんだ、と。

いたくご立腹なのでは。

だから、懲らしめる為にキスをした……とか。

いやなんでそこでキスなのよと思わなくもないけど、同居初日に押し倒されたのだ。

あり得なくもないだろう。