じめじめした薄暗い空気を吸い込んで、呼吸を整える。 そうして、いつも通りの心拍数に戻ったことを確かめて、それから彼の名前を呼んだ。 「……ライナグル」 『ようやくか。待ちくたびれた』 まるでさっきからそこに立っていたかのように、何の前触れもなく男が現れた。 ライナグル。 本名なのかどうかは知らないが、彼は僕と初めて会った時に、そう名乗った。 退屈そうな欠伸を漏らすと、生気のない瞳が僕を捉える。 「時間通りでしょ」 『それでも、暇なのは確かだ』 もう一度、彼は大きな欠伸をした。