俺達は早速、イスに座って向かい合った。


まずは亘さんの笑い方検査だ。


そういえば、今朝俺は亘さんが笑う夢を見たな。あのときは、どんな笑い方だったっけ。……もう忘れてしまった。



「じゃあ亘さん、とりあえず笑ってみて」


「はい」



すっと目を閉じる亘さん。しばらく動かない。


えっ、なにこの時間。



「ええと……どうですか?」


「笑ってたのかよ!?」


「試行錯誤した結果、これが一番自然かなと……」


「いや、あっても自然な寝顔だな……」


「そうですか……」



亘さんはしょんぼりと肩を落とす。


こいつ、今までひとりでこんなことしてたのか。こんなの、ひとりじゃ絶対上達しないだろ。何が上手く笑えるまでは俺と接しない、だよ。


危なかった。今日話して正解だったな。こうやって亘さんと話せる口実ができたわけだし。



「次は俺が笑ってみるから、よく見てて。はい」



俺はいつも通り笑った。頭の中には亘さんを思い浮かべて。



「わぁ……素敵な笑顔ですね……」


「………ほめる暇があるんだったら盗めるように努力しろ」



ほんと亘さんは、よくそんな恥ずかしいことをさらっと言うな……。



「は、はい。ええと……こうですか?」


「うわぁ」



口元がピクピクと上下して、到底笑顔には遠かった。さらに、目は無理に細めているせいか険悪な表情にしか見えない。


こんなブサイクな亘さん初めて見た。