おかしい。おかしい、おかしい。
「和泉くん? 大丈夫ですか?」
「なっ……なんでもない。なんでもないよ」
大丈夫なわけあるか。
体の火照りが戻らない。嫌な汗がじんわりと滲んでくる。
亘さんにはもちろん気付かれていて、ハンカチで額を拭こうとしてくるのを制止した。
こうなったら、どうにか無理矢理話題を変えないと―――
「そっ、そうだ亘さん、連絡先交換しない?」
とっさに出たのがそれだった。
「えっ、いいんですか? したいです」
「うん、でも、二人だけの秘密だよ」
よし、調子戻ってきたな。
でも……さすがにまずいか?
「秘密? 何かあるんですか?」
「俺、初めてなんだよね。人に連絡先教えるの」
「えっ……そっ、それは……初めてがわたしなんかでいいんですか……?」
そう、俺は比較的学校で一緒に行動することの多い高橋達四人にも連絡先は教えていない。
ああいうやつらは、何かとしょうもないことでメッセージを送ってきそうだという偏見があるからだ。
それは家でまったりと過ごしたい俺にはノイズでしかない。
ラインの友達欄には父さんだけ。
それでいいと思っていた。
「まぁ……いいんじゃないかな、亘さんなら」
「なんだか申し訳ないですね……」
「どうして? 俺が教えたいと思ったんだから、いいでしょ」
まぁめちゃくちゃにメッセージ送ってきたら即ブロックするけどな。
亘さんはそんなことしないだろ。伝えたいことがあればラインなんかより直接言ってきそうだし。



