「ええと……未知の世界でした……」
映画館から出た亘さんは、ほんのりと頬を赤らめている。
映画を見ている最中の亘さんを思い返すと、表情は乏しかったもののくるくると反応が変わって面白かった。
亘さんは……やっぱり素直な人だ。
「でも面白かったでしょ?」
「はい。二人の距離が離れそうでハラハラしましたけど、最後にはしっかり結ばれてよかったです」
「そう、楽しんでもらえてよかった」
そう言う俺に、亘さんは目を細めた。まるで眩しいものを見るような目だ。
「和泉くんも楽しめたみたいですね」
「……えっ?」
「映画を見る前と雰囲気が全然違いますよ。ふわふわしてます」
ふっ……ふわふわ!?
鼓動が強く波打って、カッと顔が熱くなった。
いつの間にか口角が上がっているのに気付いて、慌てて手で覆う。
まっ……待て待て待て。お、俺は、ふわふわしていたのか? わ、亘さんのことを、見て……!?
原因が映画なはずがない。
だって俺は、この映画に興味なんてなくて、亘さんのことばかり見ていたんだから。
ストーリーも演出もありきたりたものだと冷たい目で見ていたんだ。



