映画は中盤に入って、主役の二人がすれ違うところまで来た。


ポップコーンを取ろうとしたとき、手が当たる。どうやら亘さんもポップコーンを食べようとしていたみたいだ。


亘さんの少しひんやりした指先がかすめた俺の手はなぜかじんわりと熱くなる。


亘さんは映画の世界に入り込んでいて、俺のことなんて一切見なくなったのに。


なのに、俺ばかり。


俺ばかり、横を気にしている。


これは……まずくないか……?


熱くなった指先を見て胸がぎゅっと締め付けられた。


これは、あれだ。


俺は――


あー、嫌だ。絶対信じたくない。信じない。


亘さんのことなんて嫌いだ。


嫌いだ。


嫌い……。



―――嫌い、なのか?



嫌じゃないってことは、嫌いじゃないってことなのか?


わからない。


わからないけど……俺は、たぶん、亘さんを意識してしまっている。


今、スクリーンの中でキスをする男女を気まずそうに見る亘さんを、可愛いと思ってしまっている――。