まさかこんなに本気で返されるとは思わなかった。
映画の上映が始まって、自然と会話が終わる。スクリーンを見る亘さんの凛とした顔は、さっきまでとはまるで違った。
俺はなぜか映画に集中できなくて、亘さんのことばかり横目で見てしまう。
そうか、亘さんは……俺と友達でいたいのか。
そんなこと知っていたはずなのに、今さらその言葉が胸に溶け込んでくる。
嫌じゃない。嫌じゃないんだ。だけど、まだ心のどこかで跳ね返してくる自分がいる。
亘さんは冒頭から不良に絡まれて困っているヒロインをハラハラと心配そうに見つめていた。もうすっかり映画の内容にのめり込めているようだ。
―――亘さんは無表情だけど、無表情じゃない。
多少の感情表現はできている。今彼女は悲しんでいるだとか、喜んでいるだとか、そういうことに関しては逆にわかりやすいくらいだ。
たぶん、できていないのは笑顔だけ。
絶対、笑ったら可愛いはずなのに。
……って、なんだそれ。
俺らしくもないし、気持ち悪い。
こういうことは表面上だけでやっておけばいいのに、なんで内部まで侵入させようとしてるんだ。



