亘さんは世渡り上手




「感動しましたね、演奏」


「そうだね」



俺の感動は、別のところにもあったけど。



「これからどうします? 完全にノープランでしたね」


「いいんじゃない? こういうデートも」


「ふふ、そうですね」



モール街をゆっくりと進みながら、いろんな店を物色していく。


家族やカップル、呼び込みなどの人で賑わっている。まさか俺がその一人になるなんて、去年までは考えてもみなかった。



「何か食べる?」



父さん以外との初めての外食。


学生だからそんなに高級なものは食べられないけど、何を食べたとしても特別だ。



「ケーキは絶対食べたいです!」


「それデザートじゃん……いいけど。でも、明日も食べることになるんじゃないの?」


「明日に理人くんはいないじゃないですか!」


「!」



そっか。今日は亘さんとのクリスマスで、明日は家族とのクリスマスか。


……そっか。



「理人くんは何が食べたいですか?」


「え? えっと、ビーフシチュー……?」



あ、いやこれは、さすがに普通すぎるか。


叶葉のことを何も考えてない、俺の好物なだけだし。



「わかりました。じゃあ、ケーキとビーフシチューが食べられるお店を探しましょうか」



うん……わかってた。叶葉はあっさり了承するんだろうなって。


でも、そういうのが……なんか……。