亘さんは世渡り上手



すぐに唇は離したけど、亘さん――叶葉は、それを許容できるような性格はしていないだろう。



「……っ、ぅ、も、もぉ……」



ぎゅっと目をつむると、縁に溜まっていた涙がぽろりと落ちていく。


叶葉は攻められると弱いタイプみたいだ。


ふうん、いいこと気付いたな。いや、まぁ、俺も似たようなものだけど。



「なんでそんなに余裕そうなんですか……!」



そう言って叶葉は睨んでくるけど、涙目だしちっとも痛くない。


俺だって恥じらいがゼロなわけでない。ただ、叶葉のそんな表情が愛しくて忘れてしまうだけだ。



「和泉く……っ、り、理人くんも、もっとドキドキしてればいいんです!」



腕を引き寄せられて、今度は叶葉からの口づけ。


ふに、と柔らかい感触は、し慣れていないせいか少し唇からずれた位置に。



「どうですか! わたしの気持ち、わかりました!?」


「あー……うん」



どこのバカップルだよ。


らしくない自分に、本来の自分がツッコミを入れてくる。


本当にそうだ。今の俺は完全に浮かれている。


でもそれが最高に幸せなんだから仕方ない。



「はぁ……叶葉、すき」


「!? まだまだ余裕そうじゃないですか!」



無意識に溢れだす言葉がますます叶葉の頬を膨らませる。


しばらくは、やけになった叶葉によってこんな風景が続きそうだ。


こっちだって、心臓がもたないんだよ、ばか。