亘さんは世渡り上手



こうして俺と亘さんは玄関で亘家一同に見送られ、デートへとおもむくことになったのだった。



「……希望、和泉くんに懐きすぎです」



開始早々不満をぶちまける俺の可愛い恋人。


妹にまで嫉妬するなんて、愛されてるなぁと実感する。


亘さんは恋人になってから、ますます俺に新しい顔を見せてくれる。それがたまらなく嬉しかった。



「今から俺を独り占めできるじゃん。ほら」



手を絡める。



「他に何したい?」



距離を一気に縮めると、肩が触れ合った。



「あ……そ、その……」



耳まで真っ赤になって目を合わせてくれない亘さんに、「ん?」と顔を下から覗き込む。


俺も結構我慢してたみたいだ。今、亘さんとイチャイチャできて最高に楽しい。


にやけが抑えきれてなくて、さそがし悪い顔になっていることだろう。



「なっ……名前で……」


「名前?」


「……はい。名前で呼んでほしいです。叶葉、って……」



潤んだ瞳でやっと見つめ返してくれる。


こっちは、自分がどんな顔をしてるかわかってなさそう。


いいよ、お望み通り。



「叶葉」



ちゅ。



「あ」



やば、無意識だった。キスまでするつもりは。


このままじゃ父さんとの約束を守れずに、三好先輩みたいな男になってしまう。


うわ、絶対嫌だ……。


これからもそれを教訓としてブレーキしていかないと。