食事が終わる頃には、まるで俺も亘家の一員になれたような気分になっていた。
妹の希望ちゃんと一緒にゲームをして、すっかり懐かれた。遊び尽くしたときには「理人お兄ちゃん」なんて呼ばれて。全力で拒否させてもらったけど。
お母さんとは料理の話をした。今までほとんど父さんが夕飯などを作ってくれてたけど、俺もそろそろ覚えないとと思って。
お父さんとは学校の亘さんについて聞かれたので、質問通りに答えた。
クラス委員長をしていて、クラスメートの仲を深める橋渡しをしていること。
勉強が苦手なやつに、勉強の楽しさを覚えさせたことがあること。
それらを全て嬉しそうに頷くお父さんの姿は、まさに親だった。
「あ、もうすぐイルミネーションが点く時間です」
そんな亘さんの声でやっと時計を確認した。
いつの間にか、夕方の五時前。
イルミネーションとは駅前のクリスマスツリーのことで、毎年五時ぴったりになると点灯するらしい。
俺の家の最寄り駅にはそんなものはなかったので、近場にそんなスポットがあるなんてうらやましい。
「えー、もう行っちゃうのー?」
希望ちゃんが頬を膨らませて俺の元へと近付いてくる。
「また一回戻ってくるから」
ここからデートで夕食は別になるけど、帰る前に亘さんを家まで送るだろうし。



