おろおろと俺達の様子を心配する亘さんと、穏やかに微笑んだまま淡々と食べ物を口に運んでいくお母さん。


態度がそれぞれ十人十色で、亘さんが一番そわそわと落ち着かないでいるような気がする。


少しずつ緊張もほぐれてきて料理の味がわかってきたとき、お父さんの顔つきが変わった。



「和泉くん。叶葉は……一時期全く笑わなくなっていたんだが、高校に入学してから少しずつ元に戻っていってね。今ではすっかり笑えるようになったんだ」


「そうなの! お笑い番組とか見ててもぴくりとも動かなかったほっぺが、今は一緒にゲラゲラ笑ってるんだよ! これって絶対、理人さんのおかげだよね!?」


「希望、それは今お父さんが言おうとして……」


「だよね!? 理人さん!」



ぐいぐいと迫っていく妹の迫力に負けてしまうお父さん。


妹のその笑顔に、俺は緩く首を振って答える。



「……全部、亘さんの努力の結果ですよ。俺は、何もできなかったんです」



亘さんを救う言葉を発したのは、谷口だったしなぁ。


あのときのやるせなさを思い出す。亘さんを変えたのは俺じゃなかったんだ……って。懐かしいな。


ガタリ、と音がたったかと思えば、亘さんがテーブルに手をついて立ち上がっていた。



「そんなことないです! 和泉くんがいてくれたからこそ、わたしはまた笑いたいって思えるようになったんです!」



必死に訴える亘さん。


集まる視線。